大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和31(あ)2540 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人新井章の上告趣意第一点について。

憲法二八条は、勤労者の団結権、団体交渉その他の団体行動権を保障して居るこ

と、所論の通りである。しかし、当裁判所の判例の趣旨は、この保障も、勤労者に

争議権の無制限な行使を許容し、それを国民の平等権、自由権等の基本的人権より

優位に置いたものと解すべきでないこと、同盟罷業は、必然、使用者の業務の正常

運営を阻害する結果を招くものではあるけれども、その本質は、労働者が労働契約

上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は、労働者が団結してその

持つ労働力を使用者に利用せしめざるにあつて、使用者が対抗の一手段として自ら

なす業務の遂行を、暴行脅迫をもつて防害するが如きは、同盟罷業の本質とその手

段方法とを逸脱するものであつて、正当な争議行為と解し得ないこと及び労働争議

に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止する手段として労働者側の執

つた威力行為(いわゆるピケツトライン)も、諸般の事情からみて正当な範囲を逸

脱したものと認められる場合には、刑法上の犯罪が成立し、従つてこれを処罰して

も、憲法二八条に違反するものではないことを明白にして居る。(昭和二三年(れ)

第一〇四九号、同二五年一一月一五日大法廷判決、刑集四巻一一号二二五七頁、昭

和二四年(オ)第一〇五号、同二七年一〇月二二日大法廷判決、民集六巻九号八五

八頁、昭和二七年(あ)第四七九八号、同三三年五月二八日大法廷判決、刑集一二

巻八号一六九四頁参照)

本件についてみるに、所論第一組合員は、被告人等の属する第二組合が本件争議

を開始する以前、既に、所論第一組合と所論会社との間の労働契約に基き、会社に

労働力を提供して居り、しかも本件争議に参加して居らなかつたのであるから、第

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二組合が争議を開始した後もこれと同調せずして、引続き右契約に基き会社に労働

力を提供して居つても、右第二組合に対する違法な行為とはいえない。又右第一組

合員の行動は、所論の如く会社と結託して第二組合員の団結権乃至争議権に対する

侵害を目的としてなされたものとも認め得られないのみならず右第一組合員が本件

作業場に入ろうとした際、これを阻止するためピケツトラインを張つていた右第二

組合員及びその応援者等に対し、暴行を加えてまでこれを強行した形跡は証拠上認

められない。しかるに、第一審判決は、被告人等を含む第二組合員等が、本件作業

場に入場しようとした右第一組合員等に殺到してこれを包囲した上、その者等に対

し蹴る、踏む等の暴行を加えて、それぞれ傷害を負わせた旨を認定し、原審も亦こ

れを支持して居る。前記判例の趣旨よりすれば、被告人等のかかる行為が、争議権

の行使として許された範囲内のものであるとはなしえない。これと同旨に出でた原

判決には、所論の如き違憲、違法はない。

論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に

当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和三四年六月二三日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 島 保

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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